それなりの雑記コラム

若いなりに思ったことを書くコラムです。

#7 先輩・後輩の話

 思えば僕の人生というのは、素晴らしい先輩と頼れる後輩のおかげで素晴らしいものになっていったというのが数多くある。同級生からはあまり人気のなかった僕が、なぜだか人脈に関して自信があるのはそれゆえなのかもしれない。同級生という近しい存在ではなくて、上級生と下級生とよい関係を築くほうが得意な僕。そんな自分が大学に入って、いろいろ楽しいことになっているので、書き綴ってみたい。

 大学に入って一番最初に上下関係的なものがあるところに入ったのが学生寮入寮の時である。といっても昔のキツイ縦社会を連想するようなものではない。和気藹々とした、非常に風通しのいい場所だ。それでも最低限の上下関係は重んずる程度である。

 間もなくして新入生の歓迎コンパが行われたとき、学部が唯一同じである3年生の先輩とお話しすることができた。しかも僕がやがて専攻しようと思っている歴史学専攻の人であった。久々に深く歴史の話をすることができてうれしかったと同時に、先輩の歴史学に対する熱い思いに心惹かれたのである。

 

 まさかこの時、こんなにも今後お世話になる先輩だとは思ってもいなかったのだが。

 

 やがて部活動やサークルを決める時期に差し掛かった。大学に入ったからには、これまでにやったことのないようなものにどんどん挑戦したいという気持ちが大いにあった。自分の本当にやりたいことって何なのかなと思いながらいたのだが、母親や伯父がかつてやっていた弓道に僕は目を向けた。母からも弓道の話は折に触れ聞いていたし、ラブライブ園田海未に憧れて弓道を始めた旧友がいるということも頭をよぎった。そんな興味で僕は、弓道部に入部したのである。

 

 そしてこともあろうに、この弓道部の主将は、件の先輩だったのだ。

 

 僕は寮でもいつものように変わった人間のままでいたため、あの時のコンパではもう件の先輩はビックリ仰天してしまっていた。そんな奇人変人という語が似つかわしいぼくが、まさか弓道部を選ぶなんて、先輩にとっては腰が抜けるほどの驚きだったに違いない。

 というか実際そうだったのである。先輩は僕が入部したことを寮のLINEグループで流した。それくらいの衝撃だったのであろう。道理で入部した日の次の朝、色んな先輩に「お前弓道部に入ったんだって!?頑張れよ~!」って言われたんだな。

 

 これだけ先輩は一見僕を邪険に扱っているように見えたものの、実際のところは、しょっちゅう僕の練習を見てくださり、じっくりアドバイスをくださった。1年生は普通、2年生による指導のもと部活をするのだけど、先輩は僕のもとにわざわざ立ち寄ってくださって、いろいろ指導してくださるのだ。

 そんなある日のことである。「お前さ、明後日あたりの夜時間あるか?」

 ありますけど、どうかなさいましたか?と僕は聞いた。

 「お前とじっくり話したい。飯でも行こう。」

 いいんですか?!と思わず言う僕。この先輩とは、寮の歓迎会で2回、学部の歓迎会で1回、部活の新入生コンパで1回と、計4回もご一緒している。4回目にあたる部活の歓迎会では、もういい加減にしてくれ~!といった感じでうんざりしていたように見えた先輩が、事もあろうにこの僕を食事に誘ったのだ。

 「毒を食らわば皿まで。5回目は俺直々に歓迎したいんだ。」

 なんだかビックリしてしまった。こんな光栄なことがあるんだろうか。もうすでにいろいろ迷惑をおかけしている先輩が、部活の主将ともなる先輩が、それでいてこの僕にすごくよくして頂いている先輩が、こんな場を用意してくださったなんて。

 

 じゃあこの日にね、といわれた夜のこと。夕方6時に部活を終え、いつものように寮の自室に戻っていった。先輩と大事な時を過ごせるんだ!とおもうと、余計に練習に力が入ったし、何人かの寮の同級生や部活の同期にはこの話をしていた。お前ほんとすごい幸せもんだなあ、といわれた。そりゃそうだ。

 

 約束の夜8時半。部屋のドアを叩く音が。先輩だ。

 「さあ、行こうか。どんなのがいい?」

 僕は先輩のおすすめするラーメン屋さんに連れていかれた。道中、店内、帰り道、いろんな話をした。

 何でも話せる人なのである。専攻の歴史のこと。学部での履修のこと。これからの部活のこと。弓道の作法のこと。大学生活のこれからのこと。文武両道とはよく言うが、その文武どちらも道を同じくする先輩の言うことは、大いに自分にとって参考になることだし、自分自身のあこがれの先輩の姿を追いかける指針にもなった。

 

 好きな道ならとことん追いかければいい。大学というのはそれができるところ。

 自分の得手不得手はしっかり分かっておけ。それが将来の自分のためになる。

 大学生という時期にしかできないことはたくさんある。どれだけでもやれ。

 人間の成長というのは坂道一辺倒ではない。階段のようなもの。どこを踏み台にして、そして着実に登っていくかが大事。

 

 一回の先輩飯。時間にすれば短い。でも、自分にとって、どんな時間よりも実のある時間になった。

 

 あとから2年生の先輩が…

 「ご飯おごっていただいたんだって?うらやましいなあ。先輩本当にうれしそうだったんだよ。やっとあいつと飯食えるって」

 そしてそれからというもの、先輩は相変わらず、僕によく指導してくださる。学業も部活も精いっぱい頑張ることで、初めて先輩の背中を追いかけたことになると僕は思っている。きっと大きな期待をかけていただいているに違いない。ここから、さらに頑張っていこう。そう僕は決意を改めた。